2012年12月24日星期一

「ジンガを得た者が勝つ」,ジンガジャパンの「ファームビレッジ」はソーシャルゲーム界の黒船となるか?

 2010年12月1日,ジンガジャパン(Zynga Japan,以下ジンガ)のプレスカンファレンスが渋谷のジンガジャパン本社で開かれた。ジンガの代表取締役であるRobert Goldberg氏はもちろん,ソフトバンク代表取締役の孫正義氏,ミクシィ代表取締役社長の笠原健治氏らが並んだ会場には,ゲームメディア以外からも報道陣が詰めかけた。
 ジンガという社名は,日本ではいささか馴染みがないかもしれないが,ソーシャルゲーム界における世界最大手のデベロッパだ。Facebookを母体としたジンガのソーシャルゲームは,1タイトルごとに数千万人規模のユーザーを擁しており,事実上世界最大のネットゲームデベロッパといえる。
 日本でもソーシャルゲームは携帯電話を中心に大きなブームとなっているが,そこについに乗り込んできた黒船=ジンガは,日本のソーシャルゲームに何をもたらすのだろうか。


「リアル?ソーシャルゲーム」とは
 まず,Robert Goldberg氏の挨拶では,ジンガの現状が語られた。ジンガは3年前には存在すらしていなかったソーシャルゲームというジャンルにおける最大の成功者であるというのは周知の事実だが,「月間アクティブユーザー数(MAU)で見たとき,他社の5倍」「最大のヒットであるFarmVilleのMAUである5400万という数字は,業界2位となるEAのMAUである5100万より上」「ジンガ以外のソーシャルゲーム開発社20社を合計してもジンガのほうがまだ上」「FarmVilleだけを切り離して独立した会社にすると,ソーシャルゲーム界における二番目に大きな企業になれる」「インターネット人口の10%がジンガのゲームをプレイしており,その規模はYahoo!やGoogleなどに並ぶ」などなど,数字を聞くと,その凄まじさに改めて驚かざるをえない。


ジンガジャパン代表取締役Robert Goldberg氏  氏は,「ジンガは世界をゲームでつなげるというミッション(目的)とパッション(情熱)を持っている」と語り,彼らが提供するソーシャルゲームは「Social first, game second」(ソーシャル性が第1,ダークブラッド RMT,ゲーム性は第2)と述べた。彼らの作るソーシャルゲームは,友人や家族をより近づけるためのツールであり,そういう意味において「メールやインスタントメッセンジャーと同じ」であるというわけだ。そのため,ゲームは「競争的なものではなく協同作業的なもの」で,また「5分程度で終えられる,中毒性の低いもの」であるべきだと語った。

 同時に強調されたのが,「リアル?ソーシャルゲーム」という言葉である。リアルはソーシャルを形容する形で用いられており,これはつまり「実生活で知り合っている知人?友人?家族とのリアルなコミュニケーションを,ゲーム上でも行える」ことを意味している。オンラインゲームだけを通じたバーチャルなゲーム友達ではなく,実際の人間関係の上にジンガのソーシャルゲームは成立するということだろう。Goldberg氏は,ジンガがソーシャルゲーム界で傑出した存在となれたのは,この「リアル?ソーシャル」を重視したからだと語った。
 最後に氏は,ジンガジャパンは「日本をゲームでつなげる」ことを目指し,その最初の作品として携帯電話専用のソーシャルゲーム「」をリリースすると宣言。ファームビレッジは,前述したFarmVilleの日本版である(ただし,もとのFarmVilleはPC用)。今回のサービス開始に伴い,ジンガジャパンはソフトバンクおよびmixiのサポートを取りつけており,今後は協力して事業を展開していくと語った。



「ジンガを得た者が,トラフィックとユーザーを得る」
ソフトバンク代表取締役孫正義氏  続いて,孫正義氏が登壇。孫氏は「先ごろ,Googleを抜いたFacebookのトラフィックの1/3はジンガ1社に依存しており,逆に言えばジンガがなかったらFacebookは,その1/3を得られなかったことになる」と述べ,「全世界のあらゆるプラットフォーマー,つまりYahoo,Google,Microsoft,AppleのいずれのCEOも,ジンガにだけは特別待遇をする。これは,ジンガを得た者がトラフィックとユーザーを得るということが分かっているからだ」とネットワーク社会におけるジンガの位置を強調した。日本ではそのジンガを,ソフトバンクが得たという形になる。
 孫氏は,スマートフォンやスマートパッドの成長をふまえ,今後のモバイルインターネットは「ソーシャルなしには成立しない」と断言。そのソーシャルに華を与えるのがソーシャルゲームであり,ジンガはそのソーシャルゲームのナンバーワンなのだと述べた。ちなみに本人曰く,「ソフトバンクの新製品発表がない場所に自分が姿を現すのはかなり珍しいこと」だそうで,ジンガに対する期待の大きさがうかがえる。

「こんなの被ったのは生まれて初めてだよ」と笑う孫正義氏。まあ,そうだろうなあ
ミクシィ代表取締役社長笠原健治氏  mixiの笠原社長は,ジンガの「リアル?ソーシャル」という路線や,次世代のメールやメッセンジャーとしてのSNS機能という発想がmixiと一致していることを挙げた。「ファームビレッジは日本向けにかなりローカライズされている」と語り,「いちFarmVilleファンとして期待しているし,実はもう登録してプレイを始めている。今は,早く帰って続きを遊びたい」と述べた。
 またmixiは,プラットフォーマーとしてジンガや各SAP(ソーシャルアプリ?プロバイダ)とコミュニケーションを取っており,プラットフォームへの要望は随時反映中であると言う。


携帯専用ソーシャルゲーム?ファームビレッジ
ジンガジャパン ジェネラルマネージャー山田進太郎氏  最後にジンガジャパンのジェネラルマネージャーである山田進太郎氏(元ウノウ代表)が登壇,ジンガジャパンとその新作である「」について説明した。
 「ファームビレッジ」は,ジンガジャパン初の作品であり,「友達と遊べばずっと楽しい」を標語としたリアル?ソーシャルゲームの第一弾であると考えられる。氏が,「日本の技術力と,シリコンバレーのイノベーションを融合させた」と語るこの作品は,FarmVilleをベースとしつつも,日本の携帯電話に最適化させた作品となっている。FarmVilleの特徴である「広い農園」「デコレーションで自己表現」「友人とリアルで意味あるつながり(競争ではなく助け合い)」を維持しつつ,「好きなように,いつでもどこでも遊べる」環境を携帯電話上で実現したのが「ファームビレッジ」なのだ。
 ちなみに「ファームビレッジ」は,現在すでにmixiアプリとしてプレイが可能となっている。



ソーシャルゲームの巨人はどこに行くのか?
 僖蓮甏黏扦希绀韦丹蓼钉蓼室娊猡_認できたので,断片的ながら以下にまとめて紹介しておこう。

「ソーシャルゲームは既存のゲームより客層が広いとはいえ,コンセプトが違うしテーマも違う。最終的には二つ(コンシューマゲームとソーシャルゲーム)は共存していくだろう」

「ゲーム制作にはクリエイティブな部分も重要だが,数字や統計を使ってヒットする確率を高めていくことも大事」

「mixiと提携したのは,mixiが日本で最大のSNSだから」

「ファームビレッジは現状では完全に携帯専用。スマートフォンでの展開は未定。ただしジンガ?USはスマートフォンのタイトルを持っている」

「日本のゲームのイノベーションの歴史には大いに期待している。今あるゲームを普及させるだけでなく,新しいゲームを日本で作って世界に広めるようなこともしていきたい」

「mixiには類似のゲームもあるが,FarmVilleも類似のゲームが先行している状況で勝者となった。ゲーム性?ソーシャル性が強ければ勝てるだろう」

 などなど。とはいえ,ジンガジャパンの次のタイトルが具体的に出なかったのは,いささか残念だったといわざるをえない。
 ちなみに,筆者は取材帰りの電車の中で「ファームビレッジ」をプレイしてみたが,確かにこれはFarmVilleを携帯電話に最適化させた作品だと感じた。驚いたのは操作性だ。正直いって,現状の,お世辞にもインタフェースが良いとはいえない(ましてやある程度のリッチさを感じることも難しい)作品が頻出する携帯ソーシャルゲーム業界において,頭一つ抜けたクオリティのインタフェースをすでに完成させているという印象を受けた。

 一方で,気になることがないわけでもない。確かにmixiは会員数では日本最大のSNSで,必然的に携帯で(あるいは携帯でのみ)mixiを利用しているユーザーも非常に多いと想定される。だが,ソーシャルゲームの日本での本流がGREEやモバゲーにあるというのは,ほぼ疑いのない状況である。現状ではPC用のソーシャルゲームはまったく出す気がなさそうなジンガにとって,mixiのみにサービスを提供するメリットはどれほどあるのだろうか? あるいは,Lineage2 RMT,mixiが,よりソーシャルゲームと親和性の高いプラットフォームに変化していくということなのだろうか?
 また,ジンガ本体にしても,ソーシャルゲーム業界で極めつけに突出した企業であるのは揺るがないとはいえ,FarmVilleは,もはやFacebookのナンバーワンアプリではなくなっている(2010年11月現在。ただしゲーム分野では相変わらず1位)。ここで,さらにジンガの独特のゲーム開発史を加味すると,「新しいゲームを日本で作って世界に広めるようなこともしていきたい」という言葉にはリップサービス以上のものを感じてしまったりしなくもない。

 ともあれ,ソフトバンクに加え,ここまでソーシャルゲームでは一種独特の静かなポリシーを貫いてきたmixiというパートナーを得たジンガジャパンが,今後どのようなソーシャルゲームを展開してくるのか,注目したい。
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